医学部の解剖実習

医学部に入るにあたり解剖実習は避けては通れない道です。

 

「人体の解剖」というものについて少々。

普通の人が人体の解剖を行った場合、死体損壊(刑法190条)にあたり3年以下の懲役となります。

ただし医学部生、歯学部生の「系統解剖」は教育のためとして許容されており、この許容のおかげで私たちは解剖実習を実施できています。 

 

2年に行われたこの解剖実習は私にとって忘れられない経験です。

 

厳かな雰囲気の中、ヒンヤリとした解剖実習室には25体ものご献体

チャック式ビニールに包まれており、先生の号令のもと

私たちはご献体を前にして、1分間の黙祷の後、それぞれに解剖の作業を始めます。

 

解剖初日、この黙祷の時間に「私はこれから医師としての一歩を踏み出すのか」という思いを初めて現実的に感じたのを覚えています。

 

解剖は4人1班で行い、1班で1体を担当します。

 

今日は腕、明日は胸部、その次は腹部といったように日程で解剖部位が決められており、

だいたい2〜3ヶ月かけて1体を隅々まで解剖していきます。

 

献体はだいたいが高齢者で持病を持っている方が多く、死因もさまざまです。

そのためさまざまな病変を目の当たりにすることができます。

私の担当した高齢の女性は腎不全でした。腎臓を開いてみると正常には無い、直径2センチほどの黒曜石のような構造物を腎髄質に見ることができました。

腎組織が変性してできた結石のようなものだと思います。

見た瞬間、これが病変部か!と密かに興奮したのを覚えています。

 

また腹部大動脈の動脈硬化もかなりの衝撃でした。

通常の動脈は弾性を持ってプニプニしているのですが、ご献体の動脈は触ってみると骨と同等の硬さで、

この中に血液が流れればそりゃあ高血圧になるわ、、と感覚的に思いました。

 

他の班の中には肺がんのご献体があり、ツブツブとした腫瘍の塊が周囲の胸膜に散らばって転移しているのが一目で見ることができました。

 

このように班ごとで所見を共有して、自分の班の作業がひと段落したら他の班のご遺体を自由に見て周ったりしてました。

 

なんだか解剖実習、一瞬で終わった気がします。

(実際コロナのせいで実施期間が短かったんですが)

 

この実習から得られた学びは大きく、献体の意思を示してくださったご本人とそのご家族には感謝しかなかったです。

試験しんどいな、課題多いな、と愚痴ばかりが口をついて出る医学生生活ではありますが

ちゃんとした医師になるために勉強頑張ろうと思います。

頑張れ自分。それでは。